大幸砂田橋クリニック

腎臓内科

腎臓病が進行すると腎機能が停止し透析治療が必要となります。当院では医師、薬剤師、看護師、管理栄養士などによるチーム体制により腎機能の低下を可能な限り抑制し、透析治療導入を遅らせるため、「保冷24時間畜尿検査」を用いた保存期腎不全治療に取り組んでいます。




「保冷24時間畜尿検査」は専用の小型保冷用器を用いてご家庭で1日の尿をため、その成分を測定する方式です。一般的に外来で行われる検尿ではその時に状況や尿の濃さによって、尿蛋白などの結果が大きく変化します。1日・24時間の尿をため、1日に出る尿蛋白など測定するのが最も正確です。また、常温で尿をためると尿中の細菌繁殖により尿中の尿素窒素やクレアチニンなどの濃度が変化することがありますが、保冷することにより細菌の活動を抑制し、より正確な検査値を得ることができます。


診療では「保冷24時間畜尿検査」による尿中成分検査値と血液検査値から当院独自ソフトを用いて、
①内因性クレアチニンクリアランス(腎機能の指標)
②蛋白摂取量
③1日尿中蛋白量
④1日尿中リン総排泄量(リン摂取量の指標)
⑤1日尿中食塩排泄量(食塩摂取量の指標)
⑥%クレアチニン産生速度(筋肉量の指標)
といった腎機能や生活習慣に関わる指標を算出しています。また、経時的変化がわかるように一覧に表示し診察時にお渡ししています。



主要慢性腎疾患の種類と治療内容

腎臓病には糖尿病性腎症、腎硬化症およびIgA腎症など様々な病態があり、その病態によって適切な治療が求められます。

1.糖尿病性腎症・・・糖尿病による腎障害です。
近年、透析導入要因の疾患としてもっとも多数を占めておりますが、原因の一つに糖尿病がかなり進行した段階で腎機能低下が顕在化し、以降、加速度的に増悪することが挙げられます。

糖尿病だけではなく、腎臓に対する治療が早いほど腎機能が長く保護されます。 糖尿病性腎症は「顕性蛋白尿」が見られる段階では腎機能低下の進展も止まらない、と考えられていましたが、近年の研究から糖尿病状態を厳格に管理出来れば、腎症は増悪停止、ないしは改善が見られることがわかってきました。

当院では保冷24時間畜尿検査によって食事などの生活習慣を指標によって管理し、糸球体内圧を適性に管理することにより糸球体の濾過機能の保護ないし改善を図ります。

2.慢性糸球体腎炎・・・主として抗原抗体反応によって生じる腎障害です。
IgA腎症などがあり、抗体の一つであるIgAが腎糸球体に沈着し炎症を生じます。当院では、「咽頭・鼻咽腔の除菌療法」を中心に治療を進め、必要に応じて連携病院にて「扁桃摘除」を受けていただきます。

また、難治例の場合は「ステロイドパルス療法」を実施されている病院をご紹介させていただきますが、極まれです。 感染症の早期治療はもちろん、高血圧の治療および尿蛋白量の抑制も同様に重要であり、保冷24時間畜尿検査によってデータの変化を見ながら治療を行います。

3.腎硬化症・・・高血圧、高齢化などが関係する腎障害です。
詳しい進行機序はまだわかっていませんが、促進因子として考えられているのが高血圧、高脂血症、高蛋白食、筋肉量減少、そして運動不足などです。

腎硬化症は高齢者における腎障害で多く見られますが、低蛋白食療法などを実践すると栄養障害や体力低下を起こしやすいため、当院では腎保護の観点だけではなく、全身の機能強化とともに腎機能保護を図っています。

※ ご高齢の方に注意・・・骨粗鬆症では活性型ビタミンD製剤を処方されることがあります。活性型ビタミンD製剤を過剰服用すると腎機能が急激に悪化することがあります。血清クレアチニン値の上昇が見られない範囲で服用してください。不安を感じられましたら一度ご相談ください。

当院では定期的に「腎臓病教室」を開催しており、医師・薬剤師・看護師・管理栄養士が腎臓病の予防と進行の防止について、基礎から詳しくお話しさせていただいています。