糖尿病・内分泌内科
糖尿病・内分泌内科
みなさんは ”あなたは糖尿病です” あるいは ”糖尿病の疑いです” と言われた時、どんなことを思われるのでしょうか? ”そういえば親族にそんな人いたような・・・” くらいに思われるのでしょうか?それとも ”寝耳に水でお先真っ暗” と感じられるのかもわかりませんね。”糖尿病は贅沢病だ” なんていわれた時代もありましたが、そうではありません。
○まず知ってほしいこと
日本人を含むモンゴロイドはそもそもが、血糖を下げるホルモンであるインスリンを分泌する力が弱い民族ですので、遺伝的に糖尿病になりやすいのです。若い時はインスリンを作る臓器である膵臓の機能がよくても、加齢とともに機能低下をきたしますし、必要以上の食事負荷がかかり膵臓の仕事量が増えたために(インスリンをたくさん作らなければいけなくなる)膵臓の機能がヘタってしまった、あるいは運動不足のためインスリンを作ってもインスリンの効きが悪い、このような条件が重なっていくことで血糖値が高くなり、2型糖尿病に至ります。
○糖尿病はとても身近な病気であるということ
2012年の国民健康栄養調査では、HbA1c 6.5 % 以上ないし治療中の人口は950万人で、糖尿病患者及び糖尿病予備軍と推測される全体の中で70歳以上の男性は30.7%、女性は27.3%と報告されています。いかに日本人にありふれた病気であるか、わかっていただけるでしょうか?糖尿病になることは決して恥ずかしいことではありません。そして恥ずかしさや怖さ、通院の面倒臭さから治療を行わずに放置することだけは決してしないで下さい。
○どうして治療を行うのか?
”糖尿病と言われてもピンと来ない” こういった方はとても多いですし、実際に口渇・多尿など高血糖症状が出ていない段階で、”健康異常や風邪でクリニックにかかった際に指摘されたからきました” なんて方も多いです。そういった方々の中には ”血液検査・尿検査をしなければわからなかったことだから、特に自分自身は何も困ることがないよね。だから放っておけばいいんじゃない?” と考える方もおられます。
しかし、それこそが糖尿病の最も恐ろしいところなのです。
糖尿病には合併症があります。慢性合併症としては神経症・網膜症・腎症という細い血管が集まる場所にトラブルを起こしていきます。
それは糖尿病を発症し数日数ヶ月で出るものではなく5年10年と年月を重ねて徐々にそして確実に進行していきます。患者さんにはよくキノコのしめじで覚えて下さいとお話ししますが、神経症の ”し” 、目(網膜症)の ”め” 、腎臓の ”じ” の順に合併症を起こしていきます。
他にも大血管の障害として首の血管が細く(内頚動脈狭窄)なり脳梗塞を起こすこと、足の血管が細く(総腸骨動脈狭窄)なり足壊疽が起きることなどがあります。つまり糖尿病の治療は今現在の困っていることに対する治療ではなく、今後出現する合併症の治療をしていることに他ならないのです。
つまりこれはしっかりと治療して血糖値をコントロールしていれば合併症を起こさないようにできるという事にもなるのです。
○私が目指す糖尿病治療は
私は名古屋第二赤十字病院・名古屋記念病院で糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病や甲状腺を始めとした内分泌疾患の臨床診療を行ってきました。その経験の中で、日本の医療のあり方として、病院と診療所で治療範囲のすみ分けがはっきりとなされるようになってきたことを強く時間しました。
”今までは病院でずっと診てもらっていたのに、何故か近くの開業医に通院するように言われた” というケースはしかたないことになっているのです。自身もこれまでは、病院から診療所に紹介する側でしたし、患者さんの糖尿病のコントロールを悪化させないように治療していただけそうな診療所を探すことはごく当たり前のことでした。2016年8月から当院に赴任し、これからは病院にできない、きめ細やかな診療で患者さんの信頼を得られるように、また、病院の紹介医の先生から ”あの先生なら患者さんを任せられる” という信頼を得られるように努力していきます。病院としての診療内容も十分わかっているので、病院連携を十分に活かし、糖尿病の診断の初期や悪化時には糖尿病教育入院を病院でしっかり行い、安定したら診療所でよりきめ細やかな診療を行うという連携システムを進めていくことが大切だと考えております。
糖尿病治療は日進月歩で多彩な糖尿病治療薬がラインナップされており、糖尿病のコントロール目標値も日々変化しています。患者さん一人ひとりにあった治療を考えていき、膵臓の機能は温存させることを優先したうえで、なるべくお薬は飲まずにすみ治療を目指しています。患者さんの中には基本療法とちょっとした投薬のみで減量に成功し、減量できた時にはもう投薬が必要なくなった方もたくさんおられます。その都度、その患者さんがどういった段階にあるのか判断し説明していきます。病院などで糖尿病と診断された、または気になる症状がある場合、まずはわたしの外来にお越しいただき、気軽にご相談いただけましたら幸いです。
ここからは糖尿病の一般的な知識を紹介します。
○インスリンは何をしているホルモンなのでしょう?
私たちは食事を摂取すると消化管で吸収されエネルギーとして使用するために血糖値が上昇していきます。この血糖は膵臓で分泌されるインスリンというホルモンと一緒になって細胞の中に取り込まれていき、エネルギーとして使用されます。他にもエネルギーとして使用される栄養素はありますが糖質が中心的な存在となります。
血糖はインスリンと一緒になれないと血管の中から細胞に移動することができないので、インスリンの量が少なかったりインスリンの効きが悪かったりすると血液の中は血糖で溢れてしまい、”血糖値が上がった状態” となります。
その結果、血管も高血糖にさらされることで少しずつ傷んでいきます。水道管の中を汚い水が流れると水道管が傷んでいくことをイメージして頂けると良いかもしれません。
○わたしのインスリンは出ているの?
血液検査で簡単に知ることができます。しかし、体重歴を確認することでこれまでのインスリンの分泌能力を推測することはできます。体重が継続して多い方はインスリンの分泌が多いことが想像できますが、ある時点から急に痩せたという方はインスリンの分泌が減ってきている可能性があります。先にも述べましたがインスリンが足りない、あるいは効きが悪くなると糖質は細胞に入れないので、太ることができなくなります。
○当院のインスリン治療
インスリン治療では、血糖値の状態によって、インスリン量や食事の調整が必要なため、細やかな血糖値のチェックが必要です。当院では患者様にご自宅で血糖を測定いただけるよう血糖自己測定器をご用意しています。
血糖自己測定器があると自宅でいつでも血糖値を測定できるので、血糖値の変化に合わせたきめ細やかな血糖コントロールが可能となります。
取扱いインスリン一覧
〇ノボラピッド注フレックスタッチ 100単位/mL(3ml)
〇ノボラピッド注フレックスペン 100単位/mL(3ml)
〇ノボラピッド30ミックス注フレックスペン 100単位/mL(3ml)
〇ノボリンN注フレックスペン 100単位/mL(3ml)
〇ノボリン30R注フレックスペン 100単位/mL(3ml)
〇ヒューマログ注ミリオペン
〇ヒューマログミックス25注ミリオペン
〇レベミル注フレックスペン 100単位/mL(3ml)
なお、当院でお取扱いのないインスリンでも院外薬局で処方可能です。
○糖尿病の合併症はどんなものがあるの?
【細血管障害】
①網膜症
高血糖が続くと眼球の裏側のスクリーン機能を持つ網膜というところの毛細血管に障害が起きます。突然の失明の原因となり2010年までの視覚障害の原因調査では緑内障に次いで成人中失明原因の第二位になっています。
わたしの外来では糖尿病と診断された時点でまず眼科の受診をおすすめしています。その時点で網膜症を認めていなくとも定期通院をおすすめしており、その方の網膜の状態に合わせて1年毎、半年ごと三ヶ月ごと、毎月というふうに眼科医の先生から指示があることが通常です。
②神経症
末梢神経障害:足のしびれ、冷え、つり
自律神経障害:立ちくらみ、排尿障害、便秘、下痢、インポテンツ
その他:感覚低下、足潰瘍、足壊疽、一部筋萎縮など
当院では糖尿病のフットケアも行っております。インポテンツの治療も行っております。
③腎症
腎臓中には、血管が毛玉のようになっている糸球体が集合しており、ここでおしっこをつくっています。高血糖が続くと糸球体に障害が起きます。 腎症の発症初期には微量のアルブミン尿が出てくるようになり、障害が進むにつれ尿蛋白が増加します。1998年以降日本の透析導入原疾患は糖尿病性腎症が第1位として続いています。
腎症の予防には血糖管理のみならず糸球体の中の圧力を下げるために外来での血圧は 130/80mmHg未満(尿蛋白 1g/日以上の人は 125/75mmHg未満)にコントロールしていきます。
血圧が高くなくとも蛋白尿がある方には、糸球体を守るためにある種の降圧薬を処方することも良くあります。
また当院の特色の一つとして腎臓の専門医が常勤しておりますので保冷24時間畜尿検査を診療所で行うことができ、実際の塩分摂取量・タンパク摂取量をしっかりと把握することができます。
【大血管障害】
高血糖が続くと動脈硬化が進み、脳梗塞・心筋梗塞・足壊疽などの原因になります。糖尿病のみならず高血圧症・脂質異常症・肥満・喫煙がある場合はそちらについても治療していく必要があります。当院では頸動脈エコー・血圧脈波検査(PWV/ABI)・心エコーを行うことができます。また、名古屋ハートセンターが近いので、必要時すぐにご紹介することもできます。
【その他:歯周病】
高血糖が続くと歯周組織の血管がもろくなり、放置すると歯周病が進行しやすく、歯を支えている骨(歯槽骨)がなくなり、歯を失う原因となります。歯茎から出血・腫れ・グラつきは注意が必要です。歯科医院で定期的な診察やプラークや歯石除去の口腔内ケアが大切になります。
図:公益社団法人日本糖尿病協会 ホームページより引用
○糖尿病についてもっと詳しく知りたい方へ
〇一般社団法人 日本糖尿病学会 ホームページはこちら
〇公益社団法人 日本糖尿病協会 ホームページはこちら